大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)465号 判決

被告人 伊東浩次 外二名

〔抄 録〕

被告人伊東浩次の論旨中、原判示強盗予備の事実誤認を主張する部分及びI弁護人の論旨第一点について。

犯罪の予備とは、犯罪実行行為に時間的に先行し、将来の実行を可能にし促進し、又は容易にする行為をいい、換言せば、その成立のためには犯罪を遂行しようとする意思の実現に向けられた実行の着手に至らない程度及び段階の外部的な行為が存在しなければならない。今本件において原判決の挙示する証拠によれば、被告人は、原判示日時頃東京都新宿区新宿二丁目附近道路上で所持金が六十円位しかなくなつたので、自己の着用しているズボンの革バンドで運転者の首をしめて脅かし金員を取ろうと決心して、折から被害者秋山幸雄の運転するトヨペット五十四年型タクシー(五―き三七〇八号)を呼び止めその車に乗つて青山二丁目迄運転を命じ、途中神宮外苑等の暗い所で右犯行を実行しようとその機を窺つていたが、遂にその機会を発見するを得ず青山一丁目の交叉点附近迄行つてしまつたものである事実を窺うことができる。すなわち、これによれば、被告人は金員強取の手段として自己の着用しているズボンの革バンドを使用することを決心してその儘実行の目的物件たる乗用自動車に乗つたこと、実行の機会を物色しつつ自動車を運転させたこと等によつて、被告人の自動車運転者を脅かして金員を強取しようとする決意がその犯罪実行の前段階としてこれを可能容易ならしめる諸々の準備的な段階における動作にまで発展して行つたものであることが認定できるのであつて、この行動は前に述べた意味において強盗の予備を構成するものと解するのが相当である。原判決はその挙示する証拠によつて以上の如き意味において強盗予備の事実を認定し法令の適用をなしたものであつて、記録を精査するも右事実認定に過誤なきは勿論その法令の適用にも何らの瑕疵は存しない故に各論旨は理由がない。

(大塚 渡辺辰 江碕)

註 本件破棄は量刑不当。

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